「夏が来てしまいました!!」
「去年秋の、来年の夏までに痩せる宣言はなんだったんだろうな。」
「うっさい!!!」
ぼふり、と音を立てて彼に顔面へぶつける。
こんなはずではなかった。計画では今頃ダイエットに成功し、目の前のこいつが頭を下げるところを想像してニヤけていたはずなのに。
食べ物の秋が悪い。クリスマスが悪い。鍋が悪い。お餅が悪い。花見のお団子が悪い。どうしてみんな揃いも揃って美味しいんだ。美味しかったです。
「いっぱいたべるきみがすき。」
「一昔前のフレーズで慰めてくんな、YouTubeで見たのか。」
悔しい。とても悔しい。だが夏は楽しい。
夏ほど朝と夕方が楽しい時期はない。昼間は地獄だが。
「おかえり、夏。」
巡り巡って帰ってきた季節。
「よし!ただいま、夏!!」
そしてこれから共に過ごす季節。
気持ちを春に置いてきて、もしくは秋に任せるとして、楽しむしかない。
「アイス食べる?」
「……食べる。」
餌付けしてくる彼に恨めしい気持ちが湧いたが、アイスに罪はないと思い直した。
【ただいま、夏】
8/5/2025, 7:55:35 AM