飛花

Open App

僕は、意気地無しのせいで、君と会う最後のチャンスを逃した。君は引っ越してしまおうとしていた。迷っていた。まだ会いに行けるときでも、君が忙しいかなとか言い訳して、「最後」から逃げた。最後にしたかった会話ができなかった。
もう君に会えないのだと悟った。それでも会いたくて会いたくて。場所さえ分からないのに君を捜した。見つかる訳もなく、程なくして僕は帰宅させられた。
引っ越しから半年後、君から葉書が来た。どれほど喜んだか。住所が分かってようやく会いに行けるのだと、確信した。けれど、葉書には絶望の言葉が書いてあった。
「うちの子と仲良くしてくれてありがとう」
君は、もうこの世には居なかった。交通事故らしい。苦しかった。僕はどうすれば良かったのだろうか。どうしたとしても、君がこの世には居れやしないけれど。
もう振り向かないことにしよう。だって、僕が泣き続けてたら、君も悲しいでしょ? ずっと君は僕の心に住んでいるって信じて、僕は前を向くことを決意した。ただ、これだけは言いたかった。ありがとう、って。




#君と最後に会った日

6/26/2023, 10:50:27 AM