健太郎は一人の娘に長い間恋をしていた。
昔は共に遊び、時を過ごした仲であった。然し健太郎は意気地無しでその想いを伝えられずにいた。
健太郎は夢を見ていた。
それは不思議で奇妙な夢であった。隣に女が座っていて、健太郎に何かを話しかけているように見えるのに声が何も聞こえないのだ。健太郎は姿形がはっきりしない其の女に、一か八か自分の愛している女の名を呼び掛けた。すると其の隣の女が、片想いの女の影を落とした。とても愛らしい、そしてとても元気な女の影だった。長年拗らせてはどんどん質量が重くなってゆく彼の恋は、その女が自分の想い人だと分かった瞬間、一層大きくなって弾けた。彼女が夢にまで出てきて、やっと自分の大きく実った愛を自覚した健太郎はもういい加減この想いを伝えなければいけないなと思った。
この甘い夢から醒める前に、この形容し難い愛を長年の思い出を拾い集めて何とか言葉にしなければと思った。
そしてその夢から覚めたらすぐに、彼女の元へ走ってただ一途にこの愛を伝えようと決心した。
健太郎の目には希望の輝きが煌めいていた。
3/22/2026, 12:13:15 AM