灰田

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「楽園」

(こんなこと、叶ったら嬉しいなぁ…と遠くを見つめるのも、いいね。
そしてそれをすぐ、忘れてしまうのもいいね。)

「フランケンシュタイン」の怪物は、人間の愛情を求めても決して得られなかった。
あきらめなければならなくて、どんなに悲しかっただろう、と思う。

だけど物語の外側で、たくさんの人間が、
彼の悲しみに触れて…ああ、君の悲しみはまるで私の悲しみのようだと、その心を寄りそわせていったのだ。

君の預かり知らぬ遠い場所で、君の夢が確かに叶う。
君の望んだかたちじゃないけれど、
君が思ったよりも、ずっと深く叶う…

…こんなふうにして、時間も世界も超えて、叶う夢もあるのかもしれない。

誰かの悲しみが届き、誰かの幸福が芽吹く。

もしかしたら、もう、叶っているかもしれないと、思ってみるのもおもしろいかもしれない。

心を粒子みたいに彷徨わせて、固定された夢から抜け出して、小さく、小さく、叶えてゆくんだ…

言ってみれば楽園って、持ち運び可能で、
そう…だから…君の言葉や歌ですらなく、君そのものなんだと思うから…

…君という楽園の見る夢なら、
どんなに不思議な、微細で切なく、切実な叶い方をするんだろうね……?

君が、その夢が本当は叶っていたって知ったら、何て言うかはわからないけれど、(だって、誰だってわかりやすく報われたいものね…。)
誰かの孤独を雪ぐことが出来たってことは、知ってほしいなと思う。




4/30/2024, 10:47:07 AM