心のざわめき
私が、保管庫からフロアに戻った瞬間。
本当にその刹那、誰も話さない無の時間が訪れた。
わざとらしく誰かが咳払いをする。
2週間後には退職が決まっているのだから、雑用をさせられても仕方が無いのだろう、といった言葉たちが宙を彷徨っていた。
彷徨っている言葉たちを蹴散らし、引き継ぎ書類を山積みにしたデスクに座る。
私と書類の世界。
私は今日、あなたを片付ける。そうすることで前に進む。
私は出来るだけ、優しくタイピングする。
タイピングの音だけが、静かに鳴る。
私だけの世界。宙に舞う言葉たちは消えた。
私は想像する。
2週間後、桜の花びらが舞う中、ゆるやかに歩く姿を。
3/15/2025, 4:59:55 PM