しを

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毎晩毎晩、おまじないをかけるように母は言った。
「あなたは私の宝物」と。

幼い頃にはくすぐったいような、思春期の頃にはうざったいような気持ちで聞き流したその言葉は、歳を重ねるごとにただの習慣となっていった。

そんな宝物はいつの間にか大人になり、そんな習慣も忘れていった。

ある時宝物はふと気付いた。
毎晩毎晩、やわらかな髪を撫でながらおまじないをかけるように呟く自分に。

「おやすみ、ママの宝物ちゃん」


11/20/2022, 3:38:41 PM