たやは

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香水

香水の匂いは嫌いだ。

私を作った女の匂いがするから嫌いだ。
ろくに子育てもしないくせに、子供を作る。避妊の仕方も分からないのに快楽だけ求める。子供は親を選べないとか、親ガチャはずれなんて可愛げのあるものではない。

家の中に私は存在しなかった。だれにも「おはよう」も「おやすみ」も言われたことはない。当たり前だ私は存在しないのだから。ご飯は作って貰ったことない。1ヶ月分のお金を渡されるだけだ。仕事から酔って帰って来る女は、いつも機嫌が悪く、良くて怒鳴り散らす、悪くて髪の毛を掴まれて投げ飛ばされる。そんな毎日だ。

そんな女が死んだ。仕事の帰りに増水した川に落ちて溺死した。

私はこれからは自由だ。
でも、私はまだ1人で生きて行ける年齢ではない。誰かの庇護のもと生きて行かなけれはならない。私を必要としてくれる人はこの世界にいるのだろうか。

あれから3年。
私はフランスの片田舎に養父母と暮らしている。フランス語はまだ完全に理解できないことも多いが、私はここで必要とされている。何もない田舎町だが、町一面に小麦畑が広がり優しい風に小麦の穂が揺れ町だ。私はそんな町に住んでいる。この町は小麦の匂いがする。
どんな高級な香水の匂いでも勝てない温かくて優しい匂いだ。

私は私を必要としてくれる人たちと優しい匂いに包まれて生きている。
ありがとう。
私を見つけてくれて。私に幸せの意味を教えてくれて。いま幸せです。

8/30/2024, 12:30:15 PM