うみ

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 ──あの人が帰ってくるまで、あと。


 窓の外から、どさり、となにか重いものが落ちる音がした。読書を中断してそちらへ目を向けると、一面が真っ白だった。

「え……?」

 雪だ。

 本にしおりを挟んで立ち上がり、締め切ってある窓に近づく。どうりで朝から冷え込むと思った。雪が降るほどの気温なら納得だ。

「寒い……」

 羽織っているカーディガンを握りしめて、静かに身を震わせる。家の中をどれだけ暖めても、窓のそばは冷える。
 特に、いつもより人がひとり少ないような日は。

「……」

 あの人は、旅先で寒さに震えていないだろうか。
 いくら旅慣れしているといっても真冬だ。宿が取れないなんてこと、起こらなければ良いのだけれど。

 吐息で白く曇ったガラスをそっとなぞって、口からこぼれそうになる寂しさを堪える。声にしたところで、待ち人が早く帰ってくるわけでもない。

 ただ、ため息を吐くくらいは許してほしい。

 さらに曇って外が見えなくなった窓から離れながら、今日の夕食は友人と摂ろうと決めた。

(寂しさ)

12/20/2024, 11:19:33 AM