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「最期くらい泣いても良いじゃない?」
確か、君がそう言ったはずなのに。どうして、君が泣いてるの?今日の私のメイク、どう?案外お気に入りなんだよね!いつもとは違う感じだけど__。あれ、気に入らない?私たち、目立っているのかな。というか、君が泣くからだよ!普段、泣いたことないじゃん。そんなに大声出さないでよ……。あっ、お母さん!お父さん!こっちだよー!

ねえ。私はクラシックなら「月の光」が好きって言ってたこと、憶えていてくれたんだね。でも、その曲はベートーヴェンだから違うよ?私はドビュッシーの「月の光」が好きなの!ほら、周りの雰囲気がサイアク!もっと楽しまないと、だからさ、笑ってよ__。

私の好きなものや嫌いなもの、何も分からなかったのに、君は私と一緒に過ごしてくれた。だから、「好きということ」を知ったんだよ。今ね、「好き」を好きになれる自分が好きなんだよ。そろそろ、サヨナラだね。最期の私の『好き』を憶えていてくれたら嬉しいな。ねぇ、最期くらい泣いても良いんだよね。うん。
じゃあ、そろそろいってくるね。
ありがとう。本当に、ありがとう。
「私に『好き』を教えてくれてありがとう。」


君のことはよく憶えています。君は本当に不思議な人でしたね。何が好きと聞いても、首を傾げるだけだった。ある時、君は自らの病を認めました。だから、僕は好奇心で君を色んなところに連れて行きました。最初の君は首を傾げたり、「なにこれ?」と呟いたりするだけで、つい面白くて、僕が笑うと君も笑いましたね。そして、最期には美しい笑顔の君が僕の中で生きています。「最期くらい泣いても良い」というのは僕に対する言い訳です。君が亡くなって、ようやく知りました。君のことは本当に好きだったということに。好奇心なんて嘘で、初めから君のことが、きっと好きだったんだと思っています。
だから、せめて、ここで言わせてください。
君のことが好きです。
僕に好きを教えてくれて、ありがとう。

2/26/2023, 1:19:02 PM