彼岸花

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踊るように

夜中、目が覚めてふと窓の外を見ると
雪が降っていた。

今年は例年よりも気温が高く、冬になっても降雪は
ないだろうと思っていたけど…

…コートを着てベランダに出てみた。
やはり肌寒いが、地面に積もった雪を見ていると
どこか暖かさを感じ落ちる

雪たちは真っ直ぐ下に落ちるのではなく、
しばらくふわふわと漂った後、右に左に落ちるのだ。
手のひらを広げるとその中に落ちる雪もあった。

…まるで自分の意志があるかのように。

俺は今まで雪が羨ましいと思っていた。
すぐに落ちて、すぐに溶けてなくなるからだ。

……俺なんか
落ちてばっかりだ。

志望していたダンサーのオーディションにも落ち、
最後の希望だったバックダンサーのオーディションにも
落ちてしまった。

こんな俺なんか誰の目にも留まらず
溶けてなくなってしまいたい。

…でも、雪ってなんで溶けるってわかってるのに
降ってくるんだろう?

単なる気象だということは分かる。
でも、だったらなんで一つ一つ形が違うのか?

…こいつらもまた、俺みたいにあがいてるのかな…

落ちる直前まで必死に踊って舞って、
華やかな姿を見せて…

………よし。

…部屋の中に入り、思いっきりコートを脱いだ。
そして勢いよくパソコンを開く。

雪ごときに負けてられない…!!
そうして俺は次のダンスオーディションを探した。

…どんなダンスでも構わない

俺は落ちても落ちてもあがき続ける!

『いつか笑って踊れる日を迎えるために』

9/7/2023, 1:39:29 PM