【手を繋いで】
翌日眼を覚ますと、僕達はずっと手を繋いだままだった。まだ眠っている彼女に何気なく眼を向けて、僕は心臓を鷲掴みにされた気がした。
透き通る程白い彼女の頬に残る、涙の跡。
(あぁ、君は……僕の代わりに泣いていたのかも知れない)
繊細な彼女にはきっと、繋いだ手から僕の欝屈した思いが伝わってしまったのだろう。
それが例え僕の痛い妄想に過ぎなくても、眼の前の彼女に心が締め付けられ、愛しく思う気持ちに嘘偽りはなかった。
独りで居られたら、なんてどうして思ったりしたのだろう。
彼女が側に居てくれて、僕はどんなに救われたか知れないのに。沢山の思いを優しさを、彼女から貰っていたというのに。
自分が彼女を苦しめてしまったと気付くのは、いつも後になってから。
自分が満たされてからでないと気付けない、僕はそんな年だけを重ね身体が大きいだけの子供なのだ。
情けなくも僕は、彼女が居ないともう一歩も進めなくて―――
でもそれを、こんなに悔しく感じたのは初めてだ。今更ガキだと自覚したからと言って、すぐに変われやしないけれど。
強くなりたい。
彼女の全てを包み込める位、側で支えてあげられる位。彼女が僕にそうしてくれた様に。
その時、もそもそと布団が動いた。
「ん……っ」
「お早う」
「おはよ……。眠れた?」
「うん」
「そう、良かった」
「多分これのお陰かな」
朝まで繋いだままだった手を、軽く持ち上げて彼女に見せた。まだ寝呆け半分の彼女も、流石に驚いて眼を見張る。
「え、これずっと?」
「そう。このままだった」
頷きながら僕が言うと、照れ臭そうに……それでいて幸せそうに彼女は笑った。つられて僕も頬が緩む。
彼女が嬉しいと、僕も嬉しい。それはこんなにも幸せで、簡単な事だったんだと実感した。
「そっか。ねえ……もうちょっと、このままでもいい?」
「うん」
その笑顔を、このささやかな幸せを守る為ならば、僕はきっと強くなってみせる。そう胸に誓い、彼女の白い手にキスをした。
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※2023/11/3 お題【眠りにつく前に】の続き
12/9/2023, 3:22:03 PM