「貴方が選ばれました。おめでとうございます」
世界中の健康な人間から一人、臓器提供しなければいけない者がランダムに選ばれる。
「何で俺が!」
「どうして私なの……」
「早く帰らせてよ!」
ここに連れてこられた者は皆、思い思いに泣き叫んだり絶望したり様々だ。
「誰かの為になるならいいよ」
中には淡々と受け入れる人間もいる。これが運命だと言うように、なんの抵抗もなく。
「誰かの為、などと建前ではないのですか?」
ふと疑問に思った審査官は、そう聞き返した。光を宿していない瞳が審査官をじっと見つめる。
「私はちゃんと思ってるよ。偽善がほとんどだろうけどね」
淡々と、淡々と。長い黒髪を揺らして、少女は首吊り台に手をかけた。
『誰かのためになるならば』
7/26/2024, 10:15:43 AM