むゆ

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【相合傘】


…今日も快晴だ。

そんなことを思いながら窓の外を眺める




『聞いて!この前彼氏と相合傘しちゃった!』
『いいね。どっちから誘ったの?成り行き?』

嬉しそうに話しかけてきた友達に当たり障りのない相槌を返しながら、思考は別の方へと向いていた。

相合傘、かぁ…



『ねえ』

顔色を伺いながら声をかけてみる
彼は最近不機嫌なことが多い。

『なに?』

返ってきた返事の声色に暗い感情は無かった
よかった、今日は大丈夫みたい。

『あのね、友達がね。相合傘したんだって』
『そっか』
『うん』

呆気なく会話が終わってしまった。
素直に気持ちを伝えるってむずかしい。

いつの間にか愛情表現をすることもなくなり
ただ惰性で一緒にいるような、曖昧な関係。
もしかしたら好きなのはもう私だけなのかもしれない

もう一度話を振る勇気もなくぼんやりとしながら歩いていると、ふいに彼が立ち止まった。

『なあ』
『うん?』

彼の方から話しかけてくるなんて珍しい。
どうしたんだろう

『あー、その、さ』『相合傘。したいの?』


…びっくりした。
まさか察されるなんて思っていなかった。
素直に肯定するのも恥ずかしいが、ここで認めない方が後悔すると思ったので、恐る恐る頷いてみる。


『…そっか。じゃあさ、する、?』

不自然にそっぽを向きながらそう言う彼の耳は赤くなっていた
なんだ、この初めて手を繋ぐかのような初々しい空気感は。
いたたまれない。

『いいの?』

こくりと頷く彼。
でも相合傘をするには大きな問題がある

『あの、言いにくいんだけど今晴れだよ。』

そう、相も変わらず空には雲ひとつない
梅雨のくせにこんなに天気がいいなんて。
いるかも分からない神を恨めしく思ってしまうのは許してほしい

『日傘。』

6/19/2023, 2:37:35 PM