はた織

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  舞台は暗闇。
  ひとつのテーブルを照らす光の弱い照明。
  かすかに揺れ動く光のもと、「私」はテー
  ブルを片手で叩きつけた。

私 もう私なんかの為に優しくしないで!
 (キッと睨みつける。)

  「あなた」は微動だにせず、真っ直ぐに
  「わたし」を見つめる。

あなた ああ、そうかい。
 (頷いて、テーブルの上にそっと両手を置く)
 君は随分と人に優しくされたようだが、自分から優しさを与えず、その上自ら身を引かずに相手を遠ざけさせようとしている。
 君は人の優しさを受け止めていない癖に、優しくするなと言い返しているんだ。実に優しくない人だね。

  「わたし」は「あなた」に向かって、雄叫
  びを上げて女々しく泣いた。
  「あなた」は母性も父性も目覚められない
  胸に手を添えて、音のしない心臓の鼓動に
  耳を傾けた。

  幕。
            (250203 やさしくしないで)

2/3/2025, 1:04:08 PM