過去の写真を探そうとスマホの写真を指でスワイプして流す。
その写真を見つけて頼まれた人に送ったあと、ソファに座って過去の写真をゆっくり見直していた。
この都市に来たばかりの写真から、救急隊に入って家族のような仲間ができた頃の写真。
そしていつからか、色素の薄い女性の写真が増えていった。
あ、こんな写真も撮ったな。
この写真、こっそり貰ったな。
そんなことを思いながら、青年は見つめているとだらしなくずり落ちて座っていた体勢から、ガバッと起き上がる。
それは彼女が青年を見ている写真を数枚見つけたのだ。
彼女と付き合う前、人に呼ばれた結婚式の集合写真。
綺麗にドレスアップしているし、いつもショートカットなのにロングヘアにして髪の毛をアップにしているから、あの時は彼女だと気が付かなかった。
少し距離もあるけれど、ハッキリ青年に視線を送っている彼女の姿に気がついて、耳が熱くなった。
え、これ。みんなが持っている写真じゃない?
気がついた人、絶対いるよね……!?
耳どころか、顔全体が熱くなってくる。
その理由は彼女の表情にあった。
どこか熱を帯びた表情と視線に胸が高鳴ってしまう。
何よりこの表情をさせているのは過去の青年自身だと気がついて、それはそれでモヤッとしてしまった。
「全然気がつかなかった……」
青年自身が彼女を想うより前の写真だったので驚きを隠せなかった。
「いつから俺のこと、好きになってくれたんだろう……」
今、恋人は仕事から戻ってきていない。
彼女が帰ってきたら、写真を見せて質問責めにしようと決める青年だった。
おわり
一四三、過ぎた日を想う
10/6/2024, 12:51:31 PM