シーグラスを拾いに行きたい。
きみがそう言ったから、次の週末は二人で海へ出かけることになった。
砂浜よりも砂利浜のほうがいいらしい、それなら遠くのほうの海に行こう、素手で触れてはいけない危険な生き物はこれとこれ、きみは肌が弱いんだから絶対に日焼けしないいでたちを……と、ぼくはあれこれ算段をたて、支度をし、週末の休みを確保して、一週間をなかなか慌ただしく過ごした。
その横できみは、海に行くならせっかくだからおいしいものも食べたい、この雑誌に載ってるレストランに寄ろう、手袋も持っていかないとネイルが割れちゃうかも、去年のサンダルはどこにしまったっけ、お土産はこれを買うつもり……と、出掛ける前からもうすっかり楽しそうな顔で騒ぎ立てている。
面倒くさいことをぼくに任せるのが当たり前なきみに何かひとこと言いたいような気もしたんだけど、その笑顔を見ていたらなんだか全然どうでもよくなってしまった。
そもそもきみが言いだすまでは、ぼくはシーグラスが何なのかも知らなかったんだ。サングラスの仲間が落ちてる場所があるのかと思ったくらいだよ。海岸に着いたら、シーグラスを探すきみの隣でぼくは何か貝殻を探して見つけてみたい。色とりどりの石も綺麗だろうけど、小さくて可愛い貝殻はきっときみがとても喜ぶと思うんだ。きっとだよ。
なんといっても、きみの好きなものを一番よく知っているのはぼくなんだから。
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貝殻
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所感:
重いねー。
9/6/2024, 1:09:32 PM