『冬になったら』
「冬になったら、何をしよう」
恋人と二人暮らしの寒い家の中、私は独り言を呟く。今は秋真っ只中だが、だいぶ肌寒くなってきているし、冬が近づいているのは間違いない。
「クリスマス、お正月、バレンタイン。冬もイベントが多いよ」
私の独り言を恋人が拾い、冬のイベントを口に出す。クリスマスとバレンタインは恋人とイチャイチャして過ごせるし、お正月はまったり出来るし。寒い空気がほんわかあったまる幸せがあるかもしれない。
「他にも何があるかな」
「そうだなぁ。あったかい食べ物を食べるのはどう? 鍋とか、おでんとか、肉まんとか……」
「……お腹すいてる?」
食いしん坊モードになった恋人が流暢に食べ物の話をしており、私は笑ってしまう。そこが可愛いのだけれど。
「あとは、こたつに入って、おみかんを食べるとかね」
「こたつにみかんは良いねぇ。あっ、でも。家にこたつ無いや」
「僕、買うよ。僕もあったかいこたつに入りたいし」
「……あなた、こたつよりもみかんを食べたいだけでしょ」
私が言えば、恋人は「あ、バレた?」と、舌を出して笑っている。全く――そういう可愛いところが、本当にずるい。
「あなたって人は、何でも食べ過ぎなんだよ」
「んふふ。冬になったら、美味しいもので溢れるよね〜」
「……私と食べ物、どっちが良いの」
意地悪な質問を恋人にぶつけてみる。すると、恋人は私の後ろから優しくギュッと抱きしめて、頬に触れるだけの口づけをした。
「そーゆー事を言うと、君を食べちゃうよ?」
雄みたいな顔をチラつかせた恋人が囁く。思わず胸がキュッと鳴っちゃって、苦しくなる。
「……冬になったら、こういう人肌の温度が幸せに感じるね」
「……ばかぁ」
くっつく恋人がそう言うもんだから、身体が余計に熱くなる。この感じ、冬になったら、恋人のあったかさで甘やかされそうだ――。
11/17/2024, 1:44:58 PM