糸花

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〝星座〟

友達と手持ち花火をした帰り、街灯もあって懐中電灯も持っているけど、夜の道はやっぱり心細くなった。

早く帰ろうと早歩きをすることにした。

コンビニが視界に入り、明るさにホッとした。

ちょうど人が出てくるところだった。知ってる顔。

「え、こんな時間に何してんの」
「そっちこそ……あたしは友達と遊んでた帰り」
「真面目そうにみえて実は不良」

すっかりゴミだらけになってるビニール袋を見せてやった。

「悪かったって。で? 楽しめた?」
「うん、楽しく過ごした」

笑いかけてくれる彼。こんな人だったっけ。学校じゃ結構ふざけてる姿しか見ない。

「ところでそっちは何してるの。あたしだけ知られるのは不公平よ」
「塾の帰りだ。ほれ」

彼は鞄の中身を見せてくる。本当だった。

「日頃怒られてるのに真面目だな」
「仕返しかよ」

車が数台行き交った。

「家どの辺?」
「どうして?」
「こんな時間だし、一人より二人のほうが良くないか?」

送るよ、その言葉が予想として出てきていた。けれど現実は、こなかった。

並んで歩きながら、彼は暗くなった空を見る。

「足元見ないと躓くよ?」
「星、見れねぇなぁ」
「話聞いてる?」
「聞いてる」
「星座、わかるの?」
「わかったところで、何もカッコよくないけどな」

彼はそう言い、前を向いて歩く。

「あたしにはよくわからないから、カッコいいと思うけど。日頃の会話に軽く入れてくれたら、違った景色になるよね」
「日頃の会話に星座って出てくる割合少なくね?」
「あ〜……ニュースでよく見れますよって情報がないと確かに見ないかもね……」

お互い表情が引きつったまま笑った。

気づけばあたしの家の近く。

「ありがとうね。夜の道、本音は怖かったから、助かったよ」

彼からは、「ん〜」と手を振ってくれた。そして、ちらほら灯りがあるだけの商店街へと走っていった。もしかして家、そっち方面? 意外にも近所に住んでた。

10/5/2024, 12:45:11 PM