『この先に、未知の世界があるよ』
古い日本家屋の広い裏庭に僕を導いた君は、古びた小屋の扉の前で振り返って笑った。
『もしわたしが、この扉の向こうへ行って、帰ってこなくても、探さないでね』
いつも朗らかに、君は笑顔を見せた。
『きっと、向こうの世界を気に入って、帰りたくなくなっちゃっただけだろうから』
君が行方不明になって三年が過ぎた。
大人たちは家出だ誘拐だと騒いだけれど、僕は確信していた。
君はあの扉の向こうへ行ったのだと。
南京錠と鎖の施錠が解かれた扉をくぐって、僕も扉の向こうへ飛んだ。
そこは地球の外国によく似て、それでいて歪な世界だった。
「きみ、ここらでは見ない顔だね」
ゲームでよく見るゴブリンやオーク、俗に魔物と呼ばれるひとびとが、普通に暮らす世界。
僕に話しかけてきたのも、細いからだのコボルド。
「気をつけたほうがいいよ。めずらしもの好きの、海の向こうの王にさらわれてしまう。三年前にも、きみと同じ種族と思われる娘が、つれてゆかれた」
君だと確信した。
帰りたくなくなっちゃったんじゃないんだ。帰れないんだ。
なら、僕が君を探して、その横暴な王から取り戻そう。
必ず、ふたりで帰るんだ。
2025/03/15 君を探して
3/15/2025, 12:25:45 AM