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【夢が醒める前に】

※見る人によっては気分を害する内容が含まれます
「あいつら、二人ぼっちっつーの。二人のぼっちだから二人ぼっち」
「えーなにそれ、二人ならぼっちじゃなくない?」
「あの二人、ぼっち同士なのに全然仲良くないんだわ。だからどっちもぼっち、二人ぼっち」
「ウケる!」
隣の席のぼっちを見やる。お前の話だぞ、と。しかし、奴もこちらを見ていた。お前の話と言いたいらしい。そうこれは俺達の話だ。二人のぼっちの俺達の話。

コイツとは幼馴染で、自我が芽生えるとともに両方ともぼっちになった。小学の頃から俺達はぼっちだ。小学の頃こそは、自分にしか興味がなかったが、段々とその興味は他人へと移った。いやどちらかというと他人から浮いている自分の奇異さに移った。
劣等感とか自己憐憫とか、そういうのは感じなかった。だって、隣に俺と同じ境遇のやつがいたから。

俺はこいつを最大限の言い訳にした。今日はこいつより人と話した、俺の方がこいつより女子ウケがいいはず。そんな生活を高校一年の秋まで続けた。
……ただ限界は思ったより早く来た。
だんだんイライラしてきたのだ。ぼっちなアイツに。変われない俺に。
帰る前に俺は無遠慮にあいつに話しかけた。今まで、ろくに話したこともなかったのに。
「お前何でぼっちなわけ? とっとと友達作れよ」
「……お前がいうの?」
「うるせえ。とっとと作れよ」
「良いの?」
「は?」
俺が友達作ったらお前ひとりぼっちだよ。

「……何いってんだよ、気にしねえよどうでもいい」
「ほんと?」
俺はあることを思い出して動揺していた。両方ともぼっち? そうだったか?
(こいつめちゃくちゃ友達いなかったか?)
スポーツが出来て、頭が良くて、人当たりがよくて……あ、6年からだ。こいつが徹底的に自分のコミュニティから人を弾き出したの。
「俺、お前と仲良くなりたかった」
本を読んだよ、お前と仲良くなりたくて。友達なくしてみたよ、お前の気持ちが知りたくて。
二人ぼっちなんて渾名でもお前と括られるのが、嬉しかったよ。
友だちになろうよ。これで二人ぼっち、教室の隅で二人だけで生きられるだろ?
【二人ぼっち】2024-03-21

3/21/2024, 12:43:20 PM