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『何でもないフリ』

 本当は気付いてほしかった。
 どうしたの?大丈夫?って、聞かれたいくせに平静を装った。何でもないフリをして、何も聞かれないことに勝手に傷付いた。
 自分で弱音を吐けるほど素直じゃなかった。一人で生きていけるほど強くもなかった。一人で耐えることを選んだくせに、誰かに一緒に背負って欲しがった。中途半端に匂わせて、いざ聞かれると押し黙った。
 面倒くさい人間だった。自分で自分をそう思うのだから、他人は私をどう見つめただろう。
 本当は気付いてほしかった。何でもないフリなんてやめたかった。誰からも心配されないことが怖かった。助けを求めた手を、誰にも取ってもらえないことを恐れた。本当は、本当は。

 やっぱり、何でもないや。

12/11/2023, 3:01:18 PM