『隠された手紙』
去年の秋、病に倒れた父から帰って来いと連絡が来た。突然のことに何事かと慌てて帰省すると、直ぐに父の部屋に呼ばれた。
「急に呼び出して悪かったな」
そう言って父は部屋の飾り棚の引き出しを抜くと、更に奥に隠されたもう一つの引き出しの中から茶封筒を取り出した。
あ、これ、何処かで見たことがある…。
おぼろげな記憶をたぐり寄せると、父が喪服姿でこの茶封筒の手紙を読んでいる姿だった。祖父の葬儀の日、確かに父はこれを見ていた。
これは?と問いかけると「家に伝わる大事な手紙だ。これを誰にも見付からずに持っていて欲しい」中を確認しようとすると父が凄い剣幕でそれを制止した。
「今はダメだ!これを見る時は俺が亡くなった時だ」
父の葬儀が終わり、やっと一息ついた頃手紙のことをふと思いだした。深夜自室でひとり、封筒を開けてみる。中には地図の様な物が何枚もあり、何ヶ所も赤いバツ印がついている。そして最後の紙にメッセージが書いてあった。
「マツタケの採れる場所、他言無用」と。
2/3/2025, 8:04:21 AM