優しさで、きっと
この村では歴々に少年少女が生贄になった。
彼らは、何を持って選ばれたのか。
有栖は古文書を読みながら、考えにふけった。事実だけを伝える文字からは読み取れない。
「こいつらのことなんて知りたくないけれど、若人のみが対象なことは腹立たしいわね」
有栖はある考えが浮かんだが、すぐに打ち消そうとした。
「恐らく、その年に該当する……」
言いかけて、すぐ舌打ちをした。普段の彼女からは想像もつかない姿。知っている誰かが見たら、驚くだろう。
「やっぱり、腹が立つ。結局彼らの……っ」
途中でことばを切った。言葉にすれば、かつての彼らを批判することになるから。
それだけはしたくはなかった。
有栖は帰る途中、バス停でつぶやいた。
「優しさで、きっと救われた奴らはいる。けれど、あいつらは果たして貴方達を思い出したのかしらね?」
5/3/2026, 9:41:03 AM