【微熱】
天井の格子模様がおちてくる
なにかが目の前に迫って息ぐるしくなる
夜中にそれがくると、いそいで枕元の電気をつけて
枕元に置いている無邪気な少年漫画を開いた
当時の私の枕カバーを外すと涙のあとが染みになっていて
ひとりで泣く娘を思ってこころが痛んだと母が言った
私はあわてて、よだれだったんじゃないかと笑った
母はそれを信じたのか、安堵していたし
隣で会話を聞いていた姉は自分のほうが泣いていたのに心配されないと憤った
私はひとりで泣く子どもだった
大好きな家族のだれひとり、私のせいで悲しませたりしない
どうしてなんだろう
微熱のように恍惚とした陽炎
あれはいつだったか、遠くに揺れて人影が笑う
11/26/2024, 2:54:30 PM