【光と闇の狭間で】
…もうどれぐらい経ったのだろうか。
僕は今日も光と闇の狭間で漂っていた。
ある日突然、この『光』と『闇』だけが続く不思議な空間に放り出された。
本当に何もなく、海の中のような浮遊感を味わえるだけ。
最初こそ脱出を試みたりもしたが全て無駄に終わり、いつしか自分がなんなのかすら分からなくなってプカプカと海月のように光と闇の海を漂うだけの存在へと成り下がった。
時折、何処か懐かしい声が聞こえてくる。
しかし、それが誰のモノなのか、どうして泣いているような声で「帰ってきて」と言ってるのか全く理解ができない。
…いや、理解しようとすらしなくなったってのが正しいか。
どちらにせよ、この声が僕の動く理由にはなっていないし、今は関係ない。
僕には大事な目的があった筈だけど、思い出すまではこの快適な海で漂っていたい。
だから僕は「邪魔しないでよ」と今日も声を振り払う。
全てから目を背け続け、プカプカと海を漂う海月はもう、現し世に戻ることはない。
12/2/2024, 7:49:20 PM