NoName

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目が覚めたら、今日起こったことが全てが夢で。
あなたがいつものように早起きして、サクサクのトーストを焼いて、あたたかいコーヒーを入れてくれてたらいいのにな、と思う。
でもどんなに待ってもコーヒーの香りはここまで漂ってこなくて、あなたは私を呼びには来なくて。
あなたがもうこの世にはいない事実が、ゆっくりと心に広がっていく。それがいやでいやで、私は思わず強く目をつぶった。

ふわりと優しい風が頬を撫でる。
思わず身を起こして窓を見ると、白色のカーテンがゆらりゆらりと揺れている。
寝る前に窓は閉めたはずなのに。
『いつまでも寝ていてどうするんだい』
あなたならそう言ったのかな。
私を明るい方へ引っ張ってくれたあなたなら、こうやって私を撫でてくれたのかな。

--分かったよ。
カーテンを開け放つ。
眩しい太陽の光が部屋を支配する。
あなたが好きだった、ちょっと苦めのコーヒーを淹れよう。
あなたが好きだった、ちょっと焦げ目のついたトーストを焼こう。
そしてあの日、あなたが連れて行こうとしてくれた、青い海を見に行くよ。

7/10/2023, 12:05:12 PM