夏の気配
暑い。暑すぎる。まだ6月だぞ?春はどこに行ったんだ。
6月の初め、気温は30度を超えていた。高校生活、初めての夏。すでに億劫となっている登校中、春樹はそんな事を考えていた。
「高校生になれば、青春できると思ってたんだがな」
ポツリと呟いた春樹は、期待していた高校生活とは裏腹に、変わり映えのない日々を送っていた。
それなりに友達を作って、それなりに彼女もできて、それなりの地位を確立して、それなりに楽しくて、そんな高校生活は、もうどこにもなかった。
「まだ中学の友達としか連んでねえよ…やっぱ部活にでも入るべきだったか…」
遅すぎる後悔と共に、学校へと向かっていく足には、まるでやる気が感じられない。
もうサボっちまおうかな
そんな考えも浮かび始めていた。
ドンッ
後ろから誰かがぶつかってきて、そのまま走り去ろうとする。
「なにすんだよ!」
その声は、発することなく消えていった。
「ごめんなさい!」
走り去っていく彼女に目を奪われる。
夏の気配がする。高校生活はまだ始まったばかりだ。
6/29/2025, 1:31:36 AM