泡藤こもん

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「貴方と、なら」
向かい合う彼女にそう微笑まれて​────吐き気がした。
取るに足りない小さな出来事であっても、傍にいる誰かと共有することで大事な思い出になる。そのことは、十分に分かっている。知っている。
だが、その「つまらなさ」「楽しさ」「大切さ」の判断基準を一方的に押し付けてくるのは​────違うだろう?
私は、貴女と行くレストランも、結婚式場の下見も、ドレスブティックも、どれも楽しくは無かったよ。
貴女が頬を赤らめる度、瞳を輝かせる度、ちらとでも顔をこちらに向けて、私の淀んだ瞳に気付いてくれないものかと願っていたよ。

8/5/2023, 6:10:10 AM