前々回、前々々回、もう少し前かもしれませんが、
ともかくその頃から続いておったおはなしも、そろそろクライマックスが見えてきました。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの経理部のトップ、経理部長が、
どこぞのゲーム会社の女帝さまほど、ドッサリ資産運用利益をこさえます。
数年に1度、2度、たまに3度くらい、
気まぐれかつ自分用の娯楽に、特別予算増額まつりなど、突発開催するのです。
「にゃごにゃご。にゃご、にゃーご」
管理局の経理部長は、カギ尻尾の巨大おでぶ猫。
管理局内ではビジネスネーム制を敷いておりまして、このおでぶ猫はプロアイルルスといいました。
「にゃごご。にゃごにゃご、にゃああご」
さて、おでぶ猫のプロアイルルス部長、
今年もなかなか財政を潤わせましたので、
各部、各課、各部門対抗の予算増額戦を突如敢行。
「プロアイルルス部長は、こう仰っています」
経理部長の通訳は、部長の身の回りのお世話をしている魔法生物です。
「『さあ、諸君、闘え、争え、敵意をぶつけ合って互いに互いを潰し合うのだ』と、仰っています」
なんということでしょう。このプロアイルルス部長、趣味嗜好がまさかのほぼほぼ悪役状態!
醜かろうと美しかろうと、ともかく誰かと誰かが敵対し、攻撃し、争い合っているのを見るのが、
ドチャクソに、
バチクソに、
それはそれはもう、
超が付くほど、大好きなのです!
さて。そんな魔王プロアイルルス部長が主催する、ボーナス予算の獲得をかけた戦いです。
ひとつの部、ひとつの課で結束して、部全体・課全体で優勝予算を分け合う魂胆のチームもいれば、
ひとつの班、ひとつの部門で祭りに応募して、優勝予算をほぼ全額頂こうとするチームもいます。
今回のお題回収役は、後者でした。
後者だったのですが。
…——「おっと。今日に限って事件発生か」
予算獲得祭りは3人1チーム。
法務部執行課のいわば警察役、特殊即応部門のツバメは、予選会場に向かう途中でまさかの企業スパイならぬ局スパイを発見しました。
「まぁ、私が行かなくても、ルリビタキ部長とカラス査問官がいれば、どうとでも」
管理局には、管理局を推しの仇とばかりに忌み嫌う、「世界多様性機構」という組織からの刺客が、
たまにというか、しょっちゅうというか、
ともかく潜り込むことがありまして、
ツバメたち特殊即応部門は、そういうのを見つけるとソッコーで、捕まえてしまうのでした。
「よし。予選は他のふたりに任せよう」
お題回収。ツバメが手放した予選の時間は、ツバメの仲間に託されました。
…——「いかん。もうこんな時間か」
予算獲得祭り、ツバメのチームはあと2人。
そのうちの1人のルリビタキ部長、ただいま別の部署との緊急会議中でした。
というのも来年管理局に異動させる予定の人物、3人について、詰めの議論が必要でして。
「まぁ、俺が行かなくても、ツバメとカラスがいれば、どうとでも」
特殊即応部門の部門長・ルリビタキには、頼れる部下がたくさんいまして、
特にツバメはルリビタキの右腕、
カラスは尋問による情報収集のエキスパート。
どっちもルリビタキ、信頼しておったのでした。
「よし。予選は他のふたりに任せよう」
お題回収。ルリビタキが手放した予選の時間は、ルリビタキの仲間に託されました。
あれ。3人中、2人が出場放棄です。
となると……??
…——「あのさぁ!俺ひとりで!どうしろって!!」
予算獲得祭り、ツバメのチームは残り1人。
「ツバメさん1人ならぁ!あたしでも、なんとかなるもーん!覚悟しろぉ〜、口紅ビィーム!」
「やめて待って止めて!やめて待って止めて!
ガチでおねがいちょっと待ってまっ、あっちょ
あふん」
お題回収役、2人が手放した時間によって、
1人が苦労するハメになったおはなしでした。
結果、特殊即応部門は予選敗退。
しゃーない、しゃーない。
11/24/2025, 9:52:44 AM