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#あなたに届けたい

―――

彼奴の痕跡を探していた。
居なくなって初めて分かる、とはよく言ったもので
会わない期間だって散々あったのに、”会えない“と分かったら、途端に。

彼奴の好きなもの、場所。

気付けば手にしていた
気が付けば足を向けていた。

それで、彼奴が戻ってこない事も。

...これはただの、自己満。
心に空いたボロボロの穴を、テープで留める為の。


今日は、彼奴の元にやって来た。
持参のコップに酒を注いで

...供えてやるとでも思ったか?
バーカ、お前にやる酒はねぇよ

なんて独り言をボヤき、乾いた笑いが込み上げてくる

呑みてぇなら降りてこいよ
そしたら、考えなくもないのに

そう付け加えて、二杯目の酒を煽った。
周りを吹き抜けた風が、同調してくれているようだった

1/30/2026, 11:36:51 AM