極限まで張り詰めた緊張感は満員の球場を黙らせた
最後の一球になるかもしれぬその投球を見守るために
指先から放たれた白球は
張り詰めた糸の隙間を擦りながら真っ直ぐミットへ向かう
逆転のランナーは息巻いている
打たれればそこでおしまい
サヨナラだ
決着をつけよう、と
全力で振り抜かれたバットから乾いた音が鳴り響いた
ああ、なんとなく
予感はあった、
けど、まさか本当にこっちに来るなんて
高く高く
白球は上がる
球場からは一斉に歓声と悲鳴
まるで花火の様に打ち上がる
落下はほぼ定位置
助走をかけるにはもう少し後ろから、か
風はない
正直、つらいときもあった
辞めよう思ったこともあった
結局、レギュラーにはなれなかったけど
みんながいたから
みんなと見てた夢がある
放物線から落ちゆく白球を追って歓声は更に激しさを増す
そういえば、公式戦は初めてか
土壇場でライトに入れとか
なんだ、監督は見てくれていたのか
浮かぶ想いを切り離し
身を委ねる
球の落下はイメージ通り
逆転のランナーがスタートを切るために構える
一歩目を少し踏み出し
二歩目を強く
三歩目にふくらはぎに力を込めて
グローブが球を捉える
また一斉に花火が上がる
ステップを踏み
右手に握りかえ
全力で
真っ直ぐに
想いをぶつける
届け
真っ直ぐに
『きらめき』
9/4/2024, 2:15:29 PM