「どうして泣いてるの」
「しくしく…っ、うぅ〜」
一人の女の子に、私は思わず手を差し伸べた。
「お母さんが、帰っでぎでくれないの……っ。みーちゃん、さみしいよぅ」
「……そっか。あなたも私と同じだね」
幼い少女の手を柔く握って安心させる。一人でずっとこんな人気のないところで佇んでいたのだろうか。このまま一人にしていたら危険過ぎる。
「ねぇ、あなたの名前、何て言うの?」
「……お、お母さんが知らない人には名前を教えちゃいけないって、」
「ううん、私は知らない人なんかじゃないよ。あなたの、仲間」
「仲間……?それなら、ずっとわたしと一緒にいてくれる?」
「ふふっ、うん。そうする」
私の言葉を聞いた少女は、パアッと表情を明るくさせた。
「わ、わたしね、湊っていうの」
「みなとちゃん?可愛いお名前だね」
この子の喜ぶ顔が見れるのなら、どんな褒め言葉でもいいから言ってあげたいって思った。初対面なのに、おかしいよね。
それでも、自分と似たこの子を、私と一緒で孤独の中一人怖がって寂しがっているこの子を、笑顔にしてあげたいって思ったんだ。
だから───、
「湊ちゃん。もう、泣かないで」
そう言って、私は少女の頬を伝う涙を優しく拭った。
「うんっ。お姉ちゃん、優しいね」
私と湊ちゃんは、二人手を繋いで同じ方向へと歩いていく。これからどこに向かうのかは分からない。だけど、気の向くままに、この子とどこか遠くの世界へ行けたらいい。
私たち二人の背中を、真っ赤に燃える夕日の光が照らしてくれていた。
11/30/2023, 2:59:58 PM