それでも輝いていた日々に
『奇跡の石』だと言われたこともあった。ダイヤモンド研磨職人の手に掛かり、カットされ磨きあげられ、大粒ながらも高い透明度の美しさから天文学的数値の価値があるとまで言われた。
その後の私を巡る争いは想像にかたくないだろう。盗まれ、多くの手から手に渡り、時に血が流され、強奪され……とうとう『不幸を呼ぶ石』とまで呼ばれるようになった。
今、歴史的遺物として博物館に預けられ、ガラスのケースの中でほっと息をつく。
ようやく得た静かな時間。周りの遺物達がぽつりぽつりと語る昔語りを聴きながら、それでも私を身につけ、輝いていた人達を振り返り、過ぎた日を想う。
お題「過ぎた日を想う」
10/6/2023, 11:07:24 AM