初音くろ

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今日のテーマ
《最悪》





朝の星占いのランキングは12位。
13日の金曜日、仏滅、そして三隣亡。
朝から雨は土砂降りで、バスは混みすぎでスルーされ。
やっと駅に着いたと思ったら電車が遅延で遅刻確定。
遅れて1時間目に滑り込めば、今日提出のプリントを家に忘れてきたのに気づき、罰で課題が増やされて。
昼休みになってお弁当箱を開けたら汁漏れしててご飯もおかずも大惨事。

「そこまで続くともうネタみたいだよね」
「きっと今おみくじ引いたら大凶が出るんじゃない?」

朝からの顛末を話したら、友人達がケラケラ笑いながらそんなことを言う。
ちょっとくらい慰めてよとやさぐれるけど、でもたしかに今日の有様だったら大凶も有り得そう。
がっくりしながら机に突っ伏してると、頭にポンと何かが乗せられた。

「なに?」
「日誌。今日、日直だろ」

てっきり友人達の誰かが悪戯してきたのかと思えば、降ってきたのは男子の声。
顔を上げると、そこには好きな人がいて。
心臓が止まるかと思った。

私の片想いを知ってる友人達は、ニヤニヤ人の悪い笑顔を浮かべながら1人2人と席を立つ。
気をきかせてくれてるのは分かるけど、あからさますぎて私の気持ちがバレそうだからやめてほしい。
狼狽えて言葉も出ないでいたら、もう一度日誌をポンと頭に乗せられた。

「黒板拭くのは俺がやるから、おまえは日誌書くの頼むな」
「う、うん……あれ? でも……」

日直だったのは言われて思い出した。
でも、相方は彼ではなかった筈だ。
うちのクラスの日直は出席番号順で、彼とは出席番号が1番違いだから、一緒に当番が回ってくるはずがない。

「ああ、おまえ今日遅刻してたんだったな。あいつ今日休みだから、繰り上げで俺になったんだよ」
「なるほど。って、ごめん! 余計な仕事させちゃって」

本当なら、本来の日直である私が日誌を取りに行かなきゃならなかったし、忘れてたとはいえ黒板拭きも彼に任せっぱなしにしてしまったことに気づいて慌てて謝る。
好きな相手にこんな面倒かけるなんて最悪もいいところだ。
更なる『最悪』を積み重ねたことにまた凹む。
反省と後悔ですっかり身を縮める私を見て、彼はくすりと笑った。

「役得だから別に気にすんな」
「は?」
「ちなみに俺もおまえと同じ星座。今日のラッキーアイテムはフルーツのど飴。ってことで、ラッキーのお裾分け。これで一緒に運気挽回しような」

そう言って、日誌と共に渡されたのは、はちみつレモン味ののど飴。
立ち去る背中をぼーっと見送りながら、夢心地で手のひらに乗せられた飴を見つめる。
気づけば窓の外はいつのまにか雨も止み、雲の隙間から天使の梯子が下りてきていて。

13日の金曜日、仏滅、そして三隣亡。
星占いは12位だったけど、ラッキーアイテムののど飴で、最悪だった私の運気はどうやらここから挽回できそうです。





6/7/2023, 9:31:13 AM