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もしもタイムマシーンがあったなら。

1年前に自分のことは書いたから、今回はラボ組に聞いてみることにしよう。

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「もしも、タイムマシーンがあったなら、どうするか?」

私の質問を博士は、素っ頓狂な声で繰り返した。
次いで、目をまん丸にし、数回パチパチと瞬きをする。
暫し空中に視線を漂わせると、顎にそっと手を添えた。博士が熟考を始めた証拠だ。
左下を見つめるその瞳は、真剣な色を帯びている。

科学者に非現実的な事を言うと怒る人もいるが、博士は非現実を楽しむタイプである。
そんな博士は、過去に行きたいのだろうか、或いは未来に行きたいのだろうか。その時代に行きたい理由は何だろうか。

私の中で、好奇心がどんどん膨らんでいくのを感じる。
ワクワクと返事を待っていると、熟考を終えた博士が口を開いた。

「牧野富太郎博士とお話ししてみたいな」

牧野富太郎博士とは、日本植物分類学の基礎を築いた一人。約1500種類以上の植物を命名し、現在でも研究者が必携の書とする「牧野日本植物図鑑」を刊行した人物だ。

私達が普段目にする金木犀やクチナシなども、牧野博士によって名付けられた花だ。

「お話しが出来なくても、遠くから眺める事が出来れば十分かも。実際にお会いしたら、きっと緊張して話せないから」
そう言って博士は、はにかんだ笑みを浮かべた。

「あぁ、でも…。星の瞳と早乙女花を名付ける時は、プラカードに【別名希望!再考求む!】って書いて、遠くから振りたいな」

星の瞳は、オオイヌノフグリの別名だ。名前の由来は…ここではやめておこう。
早乙女花の本名は、…うん。こちらも、ここではやめておこう。
どちらも、【かわいそうな名前ランキング】にあがる植物たちと言えるのは確かだ。

私は博士の言葉に、激しく首を縦に振って同意した。

7/22/2024, 2:20:51 PM