私はこれまで何不自由なく、蝶よ花よと育てられてまいりました。
立派なお部屋に住まわせてもらって、何もしなくても美味しい食べ物があたえられ、ただぼうっとしているだけで褒められる。
きっと他の人から見れば、私の生活は満ち足りた幸せなものなのでしょう。それは重々理解しています。しているんです。
けれど時々、少しだけ、ほんの少しだけ、自由というものにひどく焦がれてしまうのです。
どうか、贅沢だと笑ってください。
そうでもされないと、私はきっと罪悪感で潰れてしまう。
足りなければ飢えや乾きを嘆き、与えられれば自由を求める、これは一つの罪です。これほど卑しい事がございましょうか。
あぁ、私は醜いのです。ろくでなしです。
恨めしい、どんなに嘆いてもにゃあにゃあとしか発音出来ないこの喉が恨めしい。
ねえそこのアナタ、私を逃して頂戴。
これ以上卑しく醜くなる前に、私をお外へ出してくださいな。
もしそれが出来ないのなら私を殺してください。
後生です、お願いします、ねえ、聞こえているんでしょう、ねえってば、そこのアナタ………
______お題 『蝶よ花よ』
8/8/2022, 11:11:35 AM