【君の声がする】
「ただいまぁ」
月曜からずっと働き詰めで、やっと迎えた金曜の夜。
一週間分の疲れが溜まった体を引きずり帰宅をすると、真っ先に洗面所へと向かう。
ハンドソープで指の間、爪の中までしっかりと洗っていると足元に擦り寄る存在があった。
「んなぁ〜う」
その子はうちで飼っている猫たちの中で一番の甘えん坊。
毎日帰ってくるたびに、こうして足にまとわりつきながら甘えた声を出す。
「はいはい、待っててね」
手を拭いている間すら我慢できないらしく、早く撫でろと言わんばかりに鳴き続けた。
「にゃぁう、んぁう」
「はいはい、おまたせ」
清潔になった手で擦り寄せてくる猫の頬を、耳の裏を撫でる。
すぐにゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らして、その場でお腹を見せるほどリラックスしている。
甘えてくるのは毎晩のことだけれど、これほど激しく鳴いて甘えるのは金曜日の夜だけ。土日がお休みなのだとわかっていて、たっぷり甘えてやろうと思っているのだろうか。
両手を伸ばして、必死に鳴きながら私の指を一生懸命に舐める。そのざりざりとした感触がくすぐったい。
「んにゃあ、にゃうん」
君の甘えるこの声が、一週間仕事を頑張った私にとっての一番のご褒美なのだ。
2/16/2025, 3:05:07 AM