三日月

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心と心

彼︰今日会える?

彼女︰うん、大丈夫だよ

彼︰いつも通り夜十九時、家来れる?

彼女︰だから、大丈夫だって

彼︰そっか、待ってる!

仕事終わり、今日も相変わらずそんなやり取りをメールでする。

ーーピンポーン

時間になるといつも通り彼女は家にやってきた。



「お邪魔します」

「うん」

「ふぅ、お風呂気持ち良かった、ありがとう」

「うん」

「あれ、緩くパーマかけたの?」

「うん」

「凄く似合ってるじゃん」

「うん」

しばらくの間、彼女の問いかけに返事だけの会話をすると、いつも通り僕達はベッドで身体を重ねる。


「ねえ、好きだよ」

「うん」

「私のこと好き?」

「うん」

嫌いだとは言えない。

行為の最中、彼女の問いかけに返事だけの会話をすると、身体と身体で繋がりあった僕達は最後まで終える。

心と心で成り立ってはいない二人の関係。

ーーセフレ。


「ねえ、もう少しここにいても良い?」

「うん」

いつもなら行為が終われば帰るはずの彼女が、どういう訳か今日は珍しくまだ帰らない。

「何してんの?」

「うん」

「それスマホのゲーム?」

「うん」

「面白いの?」

「うん」

ずっと話しかけて来るのがちょっとウザイ。

だからと言って彼女のことを邪険には出来ない。

腕枕はしないけど、返事だけはしてあげる。

「最近良いことあった?」

「うん」

「じゃぁ良いことって何?」

「うん」

「何それ、それじゃ全然分かんないよ!」

「うん」

「やっぱり私そろそろ帰ろうかな」

「うん」

やっと帰ると言って貰えた。

正直彼女じゃないから質問攻めは辛い。

ホットした。

彼女はそう言うと、着替えて帰る支度をする。

「帰り遅いから気を付けてね」

まだ着替えていない僕は、玄関先でポンポンと彼女の頭を軽く叩いて見送る。

家まで着いていって送らないし、キスもしない。

何処かで誰かに会ったら困るから。

「またね」

「うん」

二人の関係はこのままが丁度良い。

心と心で成り立っていない関係だからこれが僕達にとって丁度良いのだと思う。


ーー次の日。

彼︰今日会える?

彼女︰うん、大丈夫だよ

いつも通り僕は彼女にメールを入れる。

この関係は、僕達の仲が続く間は変わらない。

進展もしない。

そして終わらない。

今日も明日も僕達はセフレ。

だからこれからも同じ日々を繰り返していく。












12/13/2022, 2:16:27 AM