たぶん、ここは特等席だ。
私が一番貴方に近い。
いつも笑顔で完璧な貴方。
でも、その裏側の努力とか涙。
たぶん私しか知らない。
何でそんなに無理して頑張ってるのかも、
きっと私しか知らない。
いつも温かい体温で私を包み込んで、
そっと呟くんだ。
「あの子の隣に立ちたい」
それを聞くたび、
私の耳と長い尻尾はピクリと動く。
胸がきゅっと締め付けられる。
苦しくて、息がうまくできなくなる。
のに、貴方の撫で方が優しいから。
思わず喉がごろごろと鳴ってしまう。
いつか例の「あの子」も、
貴方の弱くて脆い部分を
知ることになるんだろうな。
あー、どうしてこんなに近いのに。
私は言葉を発することが出来ないのでしょう。
貴方は違う方向を向いているのでしょう。
どうして人に生まれられなかったんだろう。
そしたら「あの子」ポジションに
なれたかもしれないのに。
でもね。
貴方の近くで、
ずっと見守ることが出来てるのは
私、とっても幸せなの。
でも、それじゃ満足いかないの。
どうしても貴方が言う
「あの子」
が羨ましいの。
貴方に思われてる
「あの子」
が、どうしても。
だって思われる種類が違うじゃない?
私は「家族」。
「あの子」は『トクベツ』。
わがままでごめんなさい。
今はこれで我慢するからさ。
もちろん今の、貴方の隣も好きだけど。
来世では、違う形で隣に立ちたい。
ずーっと隣にいたいんだ。
首もとの鈴が儚くちりん、と鳴る。
きっと貴方には聞こえないでしょう。
この音はどこかへ飛んでしまえ。
#6
ずっと隣で
3/13/2024, 4:27:08 PM