駄作製造機

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【夢が醒める前に】

ハァッハァッ、

ずっと暗闇を走っている。

後ろからは速度を落とさずに追いかけて来る大きな大きな足音。

途方もない距離を走って走って、でも相手はずっと追いかけて来る。

ハァッハァッ、、ハッハッ、、

追いつかれたら取り返しがつかなくなりそうで、私は走るスピードを上げる。

嫌だ、捕まりたくない、ヤバい、追いつかれーーー

ピピピピッピピピピッ

『はっ、、はぁ、、、』

今日も逃げ切って、夜が明けた。

私はこの夢を見始めるようになったのは、1ヶ月前からだ。

最初は暗闇を歩いているだけだった。

けれど、2日目にまた同じ夢を見た時、私の歩く後ろをつけて来るような気配がした。

次の日には足音が聞こえて、次の日には息遣いが聞こえた。

次第に私は走るようになった。

夜が明けるまで、息が苦しくても捕まりなくて。

だんだん相手も歩きから走りになって、私を追いかけて来るようになった。

最近は寝るのも苦痛になってきて、一生懸命抗おうと思ってるけどいつのまにか寝落ちしている。

日に日に私も追いかけて来る主も足が鍛えられて速くなっている。

足を鍛えても夢の中だから意味ないんだよ。

悪態を吐きながらコーヒーを飲む。

積極的にカフェインを摂ったら眠れなくなるって聞いたことがある。

だから最近はコーヒーと翼を授けるアレを飲んでいる。
でも、、三代欲求には抗えず、結局寝落ちルートへ走る。

今日もこの夢だ。

私は何に追われてるんだ?

宿題?勉強?進路?

何も思い当たる節がないのに、何故追われなきゃいけないんだよ。

ああ段々腹立ってきたな。

タッタッタッタッ

今日も足音が後ろから聞こえる。

でも私は足を進めない。

腹が立って仕方がない。

毎日寝不足なのに眠ったら追いかけられるし、おかげで足は速くなったけどさ!

おかしいじゃん?夢の中でも運動させんなよ!

1発殴ってやる。

『どりゃあああああああ!!!』

ちょうど自分の真後ろに来た時に思い切り振りかぶって渾身の拳を相手にぶつけた。

ブァサッ!

相手は真っ黒い霧のようなものでできていて、私が殴ったらそれがたちまち離散した。

パラパラ、、

暗闇がどんどん固まったボンドを剥がすように崩れていく。

闇が開いて、光に包まれる。

見えたのは、自分の家だった。

自分の部屋、ベッドに寝ている自分。

その姿を見ていると、不意にベッドの端に黒いモヤが現れた。

『うそっ!!』

そのモヤは先ほど私が殴ったものと同じだった。

そのモヤは私が呼吸をする鼻付近に近づいていき、鼻から一気に私の中へと入っていった。

『え?え、、?』

呆然とその様を見ていると、私の姿がドンドン黒くなっていくことに気づいた。

『うそ、、そんな、、何これ、、、、』

遂には完全に私は霧と化し、何も考えられなくナッタ。

アルカナキャ。ツギニクルヒトニムカッテ。

ハシッタラオイカケナキャ。

ソウシタラモドレルカラ。

彼女は夢が醒める前にはもう戻れない。

また待ち続ける。

次なる相手を見つけるまで、いつまでもいつまでも。

ハヤクキテ。

3/20/2024, 11:09:41 AM