maria

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「生きる意味」





病院の真っ白な病室で
独り静かに呼吸する父

その周りでは母と私と妹と。

父の手を握り、足をさすり
声をかける

おとうさん! おとうさん!!


息を吸って

吐いて

吸って


吐いて




吸って





吐いて



……

もう、父は息を吸うことがなかった。

皆一様に涙を流した。

誰がいった言葉だったろう

人が生まれてくるときは
泣きながら生まれてくるけれど
周りの人は笑顔です。

人がこの世を去るときは
穏やかに目をとじるけれど
周りの人が泣くでしょう、と。

最期を送った病室の
小さな物入れの中から
父の身の回りのものを出してカバンに詰める。
古びた小さな携帯が出てきた。
父は指が大きかったため
メールを打つのにいつも苦労していた。
新聞をもつてきて だの
おちやがほしい
だの。


開いてみると 私宛の未送信メール




たんじょうびおめでとぅ

これからも




これからも、    なあに?
なあに?    お父さん


これからも



その父の言葉が

     私の生きる意味になった。




4/27/2023, 12:55:20 PM