春のあたたかな陽射しの中、君と2人、土の道を歩く。目の前には一面の黄色。菜の花畑が広がっていた。
不意に風が吹けば、目の前の黄色がふわふわとそよいで波打つ。降り注ぐ陽射しにキラキラとして、少し眩しい。
「綺麗だね」
隣の君が、風になびく黒髪を手で抑えながら、溢すようにそう呟いた。
その横顔は穏やかに微笑んでいて、とても綺麗だ。『そう言う君のほうが綺麗だよ』なんて、この場には野暮でキザなセリフが頭に浮かんだけれど、それは口には出さずに飲み込んで、僕は静かに「うん」と頷いて、繋いだ手をきゅっと握る。それに君は僕の方を見てふっと笑って、それがとても眩しかった。
穏やかで眩しい世界に、君と2人だけになったみたいだ。
春爛漫。風がまた優しく世界を吹き抜けていった。
3/28/2025, 4:51:20 AM