苑羽

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降りしきる雨の中。
しょんもりと佇む君の背中は、いつもの何倍も小さく見えて。
可愛いな…って思ってしまった。
ちょっと惚けてしまってから、慌てて私は持っていた傘を、君の上にかざした。
「…睦月さん!?」
「水無月くん。君傘忘れたんでしょう」
貸したげるよ、とそのまま傘を握られようとしたら、慌てて止められた。
「いや、いやいやいや、流石に申し訳ないですって」
「別にいいし。もってけドロボー」
「ドロ…とにかく、僕は大丈夫ですから」

それからどうしたんだっけ。そうそう、遠慮する僕を、あなたが無理やり傘の中に引き込んで、それから…
お礼にと、喫茶店で奢った君好みの硬めのプリン。掠れたレコードの音色が、無言の僕たちの間を和ませてくれた。ふと窓の外を見れば、そこは雨上がりの街。
「雨…上がり、ましたね」
雨粒のカーテンが開いて、窓ガラスに映ったあなたの瞳が、とても綺麗だった。

2人を繋いだ雨は、早々に降り止んだけど。こうして今は、幸せの虹が、2人の間で輝いている。

「雨に佇む」

8/28/2023, 10:10:22 AM