大狗 福徠

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いつものように書斎にこもる。
ウィンドウベンチに座って本を開く。
月明かりを頼りに内容を読み進めていく。
小説、歴史書、画集、図鑑。
薄く色の映るだけのそれらを何度も読み返す。
窓の外には満ち欠けを繰り返す月がある。
今日は半分くらいの月だ。
何の名前もついてない欠け方の月。
そういう月が妙に奇妙に見えたもんだから勝手に名前をつけ続けている。
そのために、月の見えるところで本を読む。
今日のあんたの名前の由来はこれなんだと伝えるために。
散々悩んで名前をつけたあとは、そのまま眠る。
ちゃんと名前をつけてやれた日は一緒に夜空を駆ける夢を見れるから。
今日だって、来年だって、死ぬまで一緒に駆けてやろうとまた本を重ねた。

2/21/2025, 10:33:14 AM