秋茜

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光と霧の狭間で

薄暗いトンネルを抜けると、新緑の森が広がり、夏草の匂いが鼻をつく。
暫く進むと、苔にまみれたお地蔵さまが沢山並んで私を出迎えてくれる山道に出る。
――また、この夢だ。
来たことはないはず。だけど、どこか懐かしさを感じる。不思議な場所の夢。

湿気を含んだ、清んだ山の空気を味わいながらさらに歩いて行くと、段々と霧が濃くなり、少し先も見えなくなってゆく。
木々の隙間から射し込むわずかな陽光を頼りに、迷わないよう慎重に奥へと進むと、古びた鳥居が現れる。
鳥居を潜りさらに先へ進むと、段々と霧が晴れ、無人の駅が見えた。
その向こう側には、果てしない空と海がどこまでも広がっていた。
この間は鳥居を潜ったところで目が覚めたのだけど。今日は、もっと先まで来てしまったようだ。
私は、駅のホームにあるベンチに座り、電車を待つ。
なぜかは分からないけれど、そうしなければいけないような気がしたから。
駅名の書かれた看板は、錆と苔に覆われて何も読めない。時刻表も、何もかも同じ。
『電車がホームに到着します。 黄色い線の……』割れたノイズ混じりのアナウンスとベルが構内に響く。
そこではっ、と目が覚めた。

いつも通りの朝。見慣れた自分の部屋。触り慣れたベッドの感触。
時計を見て、今日は少し寝すぎてしまったことに気が付く。
いけない。急いで仕事に行かないと。
着替えを済ませ、朝刊にさっと目を通し、朝食を口に押し込み、玄関を出る。

その時、どこからか電車の警笛が聞こえた気がした。

10/18/2025, 3:06:30 PM