『仕方のない子ね。』
私の泣き虫な宝物。一生守るって約束したのになぁ。
「お姉ちゃん。」
私には年の離れた弟が居る。気弱な性格で優しくて可愛い弟が居る。この子のためなら、どんな事でも頑張れる。そう思わせてくれる、私の宝物。
「お姉ちゃんが一生傍に居て、一生守ってあげるわ。」
この約束は絶対に守る。そう誓った。
でも、駄目だったみたい。両親の心無い言葉や暴力にも、学校での虐めも、全部耐えてみせた。でも世界は冷たいから、私への風当たりは酷くなるばかり。私は命を絶つ事を選んだ。
「ごめんね。弱いお姉ちゃんで、ごめんね。」
永遠とそう呟きながら、私の人生は終わった。
死んでからも意識はこの世に残るようで、私は弟を見守り続けた。
『あの子も、私と同い年になったのね。』
もう高校生になった彼。彼は私が居なくても、誰にも害を受けずにスクスクと育った。
『もうお姉ちゃんは要らないね。今日が最後にするよ。』
夜空を見上げながら、彼は何か考え込んでいる様だった。
「…お姉ちゃんに会いたいなぁ。」
ふと彼から溢れた言葉。あぁ、今日は私の命日だ。
『お姉ちゃんは、貴方の傍に居るよ。』
届かない声で、彼に話しかける。今まで何度もこうして話しかけた。勿論反応は無い。今日も無反応のはずなのに、彼は私の方に顔を向けた。
「お姉ちゃん、?」
『…貴方、私が分かるの?』
「うん、聞こえるよ。見えるよ。」
彼は泣き出した。きっと私も泣いている。
『ごめんね。約束守れなかったよ。』
「何言ってるの?お姉ちゃんは、守り続けてくれたよ。だって、ずっと傍に居てくれたんだから。」
二人で抱き合った。世界も悪くないって思ったのは、これで二回目だ。一回目は、君が生まれた日だよ。
「お姉ちゃん。僕が泣き止むまで、どこにも行ったら駄目だよ。」
『仕方のない子ね。』
「その代わり、お姉ちゃんの涙の跡が消えるまで傍に居るよ。」
『ありがとう。私の優しい宝物。』
7/26/2025, 3:33:51 PM