気まぐれなシャチ

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Day.15_『今日だけ許して』

減量を始めた。目標は「マイナス15kg!」。運動もやって食事も必死に管理した。
正直、かなりキツかった。仕事終わりの運動、お腹が空いても我慢の日々……気が狂いそうだった。

減量を始めて半年が経ったある日のこと。従姉妹が結婚するという連絡が入った。結婚式の後、披露宴でコース料理が出るらしい。

「ここまで頑張ってきたのに……」

そう呟く私。必死に体重を落としてなんとか目標まで近づけているのに。しかし、せっかくのおめでたい席で自分だけ減量を理由に食べないのも失礼な話だ。そんなことは、馬鹿な私でも分かっていた。……だからこそ、悩んでいた。

「どうしたの?」

悩んでいる私に、母が声をかけてきた。私は、減量のこと、従姉妹の結婚式、披露宴での食事のことを相談した。すると母は、こう言った。

「おめでたい席に招待してくれたんだよ?それを無下にしてまで続けるのは、どうかと思う」

少し言葉がきつく感じたが、ごもっともな意見だと思った。さらに母は続けた。

「それに、1日食べすぎたくらいで体重はそこまで増えないよ。あなたは、ストイックすぎる。もう少し、気楽にやりなさい」

母は、そう言った。母が私と同じ年代だった頃、同じように減量をしていたエピソードを聞いていたため、説得力があった。だからこそ、私がその言葉を信じるのに時間はかからなかった。

そして、結婚式当日。
会うのが小学生以来だった従姉妹は、その場にいた誰よりも綺麗で美しかった。

「おめでとう!」
「ありがとう!たくさん食べてね!」

従姉妹は満面の笑みでそう言ってくれた。私も満面の笑みで応える。

「うん!いただきます!」

あぁ、神様仏様……。今日だけ、今日だけは許してください。明日から、また気長に頑張ります。だから……

「うん!めちゃくちゃ美味しい!!」

今、この時だけは……どうか、お許しください。

10/4/2025, 12:41:34 PM