【約束】
「勝ちたい」
彼の目に映っていたのは、常に今じゃなくて未来だった。
立ち止まっている瞬間はなく、走り続ける。
「勝ちたいね」
去年の今頃、『僕らなら勝てます』と言い切った彼についてきた。
いや、喰らいついてきた。
誰よりも前のめりで、変革を怖がらない彼に。
「誰も見たことない景色見よう」
自らがヒールになることにもなんの躊躇いもなかった。
どこまでも孤独で孤高だった。
誰にも止められなかった。
彼にとって唯一無二で、証明だったのだと思う。
「どんな景色なんだろうね」
緊張で強張った顔が和らいだ気がした。
fin.
3/5/2025, 6:54:58 AM