しじま

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 花屋の横を通った時、切り花コーナーにミモザを見つけた。

ずっと昔に母に贈ったことを思い出して一束購入する。

春の日だまりのような黄色に、仄かな甘い香り。

 ミモザを渡した時の母の嬉しそうな笑顔が脳裏に過ぎった。

卒業と共に家を出てからは母とは殆ど会う機会もなく、広い家に一人住んでいた母。

 最後に会ったのは、もう、ただの抜け殻となった母だった。

記憶の中の母よりもずっと小さな身体、パサついた白髪、胸の上で組まれた母の腕は枯れ枝のように細く。

 爪には薄いピンクのマニキュアが塗られていた。

静かに眠る母の周りには、たくさんの花が供えられていた。

 母は、きっと、幸せだったんだろう。

優しく香るミモザを胸に抱いて、春の柔らかな夕日を浴びながら家路に就いた。

テーマ「たまには」

3/6/2024, 9:21:35 AM