斜め10°の小話

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<転生したら…>(セーター)

昨今、小説・漫画・アニメなどで度々話題になる所謂『転生もの』と言うジャンルがある。

トラックに跳ねられ、気づけば勇者として転生しました。だとか、最近では最強モンスターに転生して世界を救うとかって話もあった。

俺も何度かアニメで楽しませてもらった記憶がある。

でも、まさか。
自分がそうなるなんて夢にも思わなかった。

俺の最後の記憶は、大型トラックのヘッドライトで。
あー、俺死んだわ。
と思った直後、視界がホワイトアウト。
次には白いローブを着た髭面のじいさんに会ったような記憶があるが、よく覚えていない。

気づいたら、知らない部屋で目が覚めた。

転生した?と意外とあっさり納得した自分と、さすがに王道過ぎるシチュエーションに、転生後第一に苦笑いをしたい気分になった。

さて、それが数十分前の話だ。

今、俺は最高に絶望している。
何故って?
まさに、俺の転生先の話しさ。

勇者に転生?
モンスターに転生?
最悪、武器に転生とかならカッコ良かっただろうさ。

「もう!せっかくプレゼントしたのに!いらないなら捨てれば?」
「いや、そうじゃなくて…。嬉しいんだけどさぁ…。」

日本人らしき男女が言い合っている。
俺は椅子にもたれながら二人を無言で見ている。
視界にはクリスマスツリーと、ビリビリになったおそらくプレゼントの包装紙。
そして大きめの姿見。

「嬉しいんだけど、俺にはちょっと似合わないとおもうんだ。」
「なによ!かわいいじゃない!このくまちゃんの柄とクリスマスツリーみたいな色合い!似合うわよ!」
「それ、マジで言ってる?」

姿見に写し出されている俺の姿は俺だけじゃなく、俺をプレゼントされたであろう彼にも、絶望を与えただろう。

「こんなセーター買うやついるんだ…」
彼が俺、所謂クソダサクリスマスセーターを見つめながらポツリと呟いた。

まあ、そう言うことさ。

次の死因はゴミ処理場で焼死かな。
泣けないのがこんなに辛いなんて、知らなかったなぁ…。

11/24/2024, 5:13:36 PM